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同人イラストブログです。 NARUTOの再不斬さんと白を描いてます。 pixivはこちらhttp://www.pixiv.net/member.php?id=4907356 pixivでは小説も書いてます。
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小説:雨の日

再不斬さんが白の懇談に来る話。
幼少白も出ます。
3,000文字くらいあります。
「あ…雨…。」
 アカデミーの図書館で宿題を終えた白は、正面玄関前でザーザーと降りしきる雨を見つめます。
 ほとんどの生徒は下校しており、正面玄関前には白だけがぽつんと立っていました。
「午前中は晴れていたのにな…。」
 午前中の実技の授業中に晴れ渡っていた青空は、今は微塵もその姿を見ることはできません。
 白はじっと灰色の空を見上げます。
 降りやまない雨空に小さくため息をつくと、どう帰れば一番濡れずに済むかを考え始めました。
『帰る家があるって…嬉しいな。』
 ふと頭にそんな考えが過ったので、白は苦笑いを浮かべました。
 雨と風がしのげる屋根や壁。
 そして何より、自分を必要としてくれている人が待つ家。
 以前の自分が渇望してやまなかったものが、今はこの手にあること。
 ふふっと自分の小さな手を見て、幸せそうに白は笑うと、腰帯に手を回します。
 上に着ている緑色の道着を雨よけに使うようです。
 ふと顔を上げると、正門から見知った影がこちらに歩いてきます。
「あ…。」
 紺色の傘を差した再不斬さんです。
 上忍の制服を身に付けて、背を丸めてこちらに歩いてきます。
 白は腰布から手を離して、姿勢を正しました。
『もしかして…僕を迎えに来てくれたのかな…。』
 そう考えると、嬉しくてドキドキと心臓が跳ね始めます。
 再不斬さんは無言で白の前に立つと、雨に濡れた傘を畳みました。
 白は真っ直ぐに再不斬さんを見上げます
「何だ、こんな時間まで残ってやがったのか?」
 再不斬さんの言葉に白はこくりと頷きました。
 白のこなしていた宿題は、アカデミーのものだけではありません。
 再不斬さんから毎日渡されるものも含まれています。
 その宿題は難問が多く、アカデミーの教科書や家にある書物だけでは到底歯が立たず、図書館にある専門書が無いと解けません。
 任務を終えて帰ってきた再不斬さんが、全て回答が埋まっている宿題を見て満足そうに笑う顔を見るのが、白は大好きでしたので、今日も遅くまで図書館で宿題をこなしていたのでした。
「えぇ、今日の宿題はなかなか骨が折れました。」
 白はにこりと再不斬さんに微笑みます。
 今日の宿題は医学書がないと解けない問題が多く、分厚い医学全集と戦いながらなんとか図書館の閉館前に全て終えることができたのでした。
「フッ…良い子だ。」
 大きな手が伸び、白の小さな頭を撫でます。
 白は嬉しくて、肩を竦めて目を閉じました。
 その温もりに胸の奥がじんと熱くなります。
 手が離れると同時に、白は口を開きます。
「ところで、何故アカデミーに?」
 再不斬さんは傘を傘立てに立てながら答えます。
「今日はお前の懇談だろ。」
 白は少しがっかりしましたが、再不斬さんが小さな水色の傘を傘立てに立てるのを見て嬉しくて俯きました。
 ちゃんと再不斬さんは白の傘を持ってきてくれていたのです。
『僕が家に帰っているかもしれないのに…。』
 白は再不斬さんの気遣いが嬉しくて、泣きそうな表情を浮かべました。
「…白よ。」
 白は顔を上げて再不斬さんと視線を合わせます。
「一緒に来い。」
 三者面談ではないのですが、再不斬さんがそう言うので白は後を付いて教室に向かいます。
 教室前に着くと、がらりとノックもなしに再不斬さんは扉を開きます。
 中には実技と教科の担当の教官が一人ずつ机と椅子に座っていました。
「お待ちしてました、桃地さん。」
 教科の年配の教官の言葉を無視して、再不斬さんは二人の前に置かれている一組の机と椅子に近づくと、椅子を引いてどかりと座りました。
 白はその後ろにすっと立ちます。
「白、椅子を持ってきて座りなさい。」
 若い実技の教官に促されて、白は教室の後ろから椅子を持ってきて再不斬さんの後ろに置いて座りました。
「で、コイツを上忍試験に出すのの、何が不満なんだ?」
 いきなり本題を再不斬さんは切り出します。
 教科担当の教員は苦笑いを浮かべます。
「桃地さん、白くんの成績では…。」
「わざと手ェ抜かせてんのに、気づかねえのか?あぁ?」
 再不斬さんは教官の言葉を遮り、凄みます。
 教科担当の教官は冷や汗を流しながら口を閉じました。
「お前は…気付いてるんだろう。」
 若い実技の教官に、再不斬さんは言葉を投げかけました。
「こいつが、手ェ抜いてるのをよ。」
 実技の教官は怯える様子もなく、こくりと頷きました。
 彼は、普段から白が手を抜いているのを動作の端々から読み取っていました。
 そして、白のしなやかな筋肉のつき方から、スピードに特化した訓練を受けていることにも気付いていました。
「白は…上忍試験を受けても合格するでしょう…。」
 その言葉に教科担当の教官は「何を馬鹿な」と口を開きました。
「お言葉ですが、白の状況判断能力や戦略の知識はずば抜けていますよ。」
 実技担当の教官はさらりとそう告げると、真っ直ぐ白を見つめます。
 この子は美しい少年の皮を被ったバケモノだ。
 彼は鬼人の育てる少年…白をそう評価していました。
「クク…お前は話が分かるな。」
 再不斬さんは満足そうに実技の教官を見つめて笑います。
 それは冷たく人間の笑みとはかけ離れていました。
「白、あれを出せ。」
 白は頷くと、鞄の中から辞書ほどもある紙の束を再不斬さんに両手で差し出しました。
 再不斬さんはそれを受け取ると、教科担当の教官の机に放り投げます。
「こいつは放課後から今までにこれだけの量を解答できる。」
 例え本を読みながら解いたとしても、その程度の時間で解ける量でありません。
 教科担当の教官は内容を見て、ぎょっとした表情を浮かべます。
「そんな…馬鹿な…。」
 だらだらと汗を流しながら、教科担当の教官は宿題のページを捲ります。
 その内容が上忍試験と同等もしくはそれ以上でした。
 教官は再不斬さんを呆然と見つめます。
「分かったなら…推薦状を書け。」
「分かりました。」
 実技担当の教官は静かにそう答えると、教科担当の教官を見ます。
「僕らに断る理由などないでしょう。白は優秀な忍びになる可能性がある生徒です。」
 教科担当の教官はぐっと苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、次にふっと笑いました。
「…分かりました、桃地さん。卒業試験後に推薦状を書きましょう。」
 再不斬さんはその言葉を聞くと、椅子から立ち上がります。
「なら、卒業試験で最高得点を叩き出してやる。」
 ニヤリと笑った再不斬さんに、二人は体を強張らせました。
 数年前のあの悪夢が頭に過ります。
「安心しろ、こいつは誰も殺しゃしねえよ。」
 ククッと再不斬さんは笑うと、踵を返して教室のドアに向かいます。
「優秀な生徒を産み出した教官として花を持たせてやるよ。」
 そう言いながら廊下に消えた再不斬さんの後を、白は追います。
「失礼します。」
 短く挨拶をして、白は暗い廊下を駆けます。
 正面玄関前で傘を取り出している再不斬さんの隣に立つと、水色の傘を差しだされました。
「ありがとうございます。」
 白は受け取りながら、再不斬さんにお礼を言います。
「聞いての通りだ。上忍試験を受けろ。」
 パンと再不斬さんは傘を広げると、暗くなったザーザー振りの雨空の下に立ちました。
 白は正面玄関前でこくりと頷きます。
「はい、必ず再不斬さんを満足させる結果を出してみせます。」
 白の返答に再不斬さんはフッと笑うと、踵を返して正門に向かって歩き出します。
 その背を、傘を広げて白は追いかけました。
 今は未だ遠い、その隣に立つことを夢見ながら。


長くなっちゃいました。
最後駆け足過ぎましたね…。
白よりも、大量の宿題を作った再不斬さんが凄いと思います。←

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